住む場所が変わってもつながっていくもの

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6月末に仙台市へ引っ越しをした。

結婚してから始めての異動、はじめての引っ越し。

「転勤はまだないかな〜」なんて呑気に話していた夫から聞かされたまさかの辞令に(在宅勤務中に電話がかかってきたらしい)、「え、ほんとに言ってる?ドッキリじゃなくて?」と半ば本気で疑った。転勤という事実を受け入れるまでに、丸1日かかった。

 

実家からはさらに離れ、せっかく出来た友人とも離れ、さらには長女の幼稚園も探し直さないといけない。

4年半かけて築いてきた今の生活がゼロに戻ると思ったら、正直不安しかなかった。

 

とはいえ、いざ転勤となればやらねばならないことも多い。

まずは新居。一応会社で物件を探してくれるが、ネットを駆使して自分達でも物件探しを始めた。

幸運なことにプレ幼稚園や子どもセンターに仙台出身の方がいて、住みやすい地域や幼稚園情報を聞くことができた。

少しずつでも人と会っていて良かったなぁと思うと同時に、これからは頼れる先がないんだと思うと、心細さは増していくばかりだった。

 

夫とあれこれと条件を話し合い、住宅補助の範囲内か、超えても1、2万円で抑えられる家賃の物件を3つ4つ選んで、見学にいくことにした。

夫の仕事が立て込んでいるため、下見できる時間は半日のみ。

その日は滝のような土砂降りの中、乳幼児2人を連れて部屋を内覧した。

時期が悪いのか物件選びが悪かったのか、候補の物件はほとんどがクリーニング前で、しかも風呂場や壁紙に黒黴がびっしりと生えていたり、床が傷だらけだったりと、これで住みたいと思う人がいるのかと疑うほどの状態だった。

場所も近いし数時間あれば決まるだろうとたかを括っていたが、どの物件も決め手にかけ、全く決まりそうにない。

家賃を上げてもう一度探しなおそうかとも考えたが当日すぐに内覧できる物件はあるはずもなく、後日改めて時間を作るのは夫もわたしも難しいということで、駅に近くて、最も内装が綺麗な部屋に決めた。

新幹線を一本遅らせてその日のうちに契約を済ませた。

けれども、納得いく物件探しができなかったことで、胸のうちにモヤモヤとした不安を残すことになった。

実際に移り住むまでの3週間、わたしは繰り返し「あの部屋にしてよかったんだろうか・・・」と思い悩むことになる。とはいえ住めば都というもので、住み始めて2週間がたった今は、まぁなんとか暮らしている。

 

 

さて、新居が決まれば次は引っ越しの手配。

会社が契約しているので、業者に迷うことはない。

見積りにやってきたのは若い男性で、普段男性に免疫がない長女がちょこちょこ寄っていくほどの爽やかイケメンだった。

イケメンに釣られたわけでもないが、引越し作業に加えてオプションで荷造りもお任せすることにした。

というのも、転勤経験者達に口を揃えて「荷造りは業者に任せたほうがいい」と強くおすすめされたからだ。

引越し自体は会社負担だが、5万円ほど自腹を切ってプロにお願いすることに決めた。これが、思った以上に大助かりだったのだ。

自分でやってみて分かったことだが、乳幼児のいる家庭で荷造りはものすごく難易度が高い。

移動前は引き継ぎや送別会で忙しく、夫は頼りにならない。

母が視界から消えると泣き出す赤子に、入れた側から荷物を出す3歳児を抱えての荷造りは、わたしには到底無理だった。

そうして引越し前日まで本当に何一つ準備をしなかったわけであるが、前日にやってきた可愛らしい3人の女性達の手にかかれば、3時間ほどで家財一式が綺麗に箱詰めされてしまった。

下手に自分達でするよりプロに任せた方が丁寧に梱包してもらえた上に、場所やジャンルごとに分別されていたので新居で荷物を開ける時も手早く作業できた。

お金はかかってもプロに任せて正解だったと思う。

 

引越し前にわたしがやりたかったこと

 電気やガスの手配は夫が受け持ってくれ、荷造りもプロ任せ。わたしはというと、引越し準備はそっちのけで、娘達を連れてあちこち出かけていった。

特別な理由や転勤がない限り、引っ越してしまえばここに戻ることはない。今のうちに、できる範囲で出かけておこうと思ったのだ。

 

今までの軌跡を辿るように、よく通っていたパン屋やケーキ屋、本屋など、お気に入りの店をあちこち回った。

一番仲のいい友人には転勤を知った直後に連絡して、そこから毎週のように遊んだ。

週1で通っていた子どもセンターにも行って、先生にお別れを言った。

時折相談にのってもらった、市役所の子育て担当の方にも挨拶に行った。

 

 

4年前に引っ越してきた時は、「数年後にどうせまた転勤するんだから」とこの地での生活や人付き合いを軽くみていた節があったと思う。

それが子どもが生まれてから1人ではどうにもこうにもいかなくなって、娘を連れてあちこち出歩くようになってみると、少しずつ心地の良い場所や人ができた。

 「離れるのが寂しい」そう言ってくれる人達に出会えて、私はなんて幸せ者だったんだろう。

同じ社宅のママさんに挨拶に行ったら、「またどこかで会いましょう!」と言われてハッとした。

住む場所が変わっても、お互いのことをすっかり忘れてしまうわけじゃない。一緒に過ごした時間は、わたしの中にも、相手の中にも、消えずに残っていくのだ。

場所が変わっても、離れていても、人との繋がりや記憶はずっと大事にしまっておこう。

優しい時間は、きっとこれからのわたしを支えてくれると思う。

 

転勤はリセットではなく、リスタート。

新しい土地で、きっとわたしは新しい人と出会って、新しい経験をしていく。

不安よりも、ワクワクの方が大きいのは、きっとこの経験の先に成長した自分や、人との繋がりができていると信じられるからだろう。

どんな風に自分が動いていくのか、今後がちょっと楽しみである。